小さな箱庭Diary

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【Catcher In The Relay】言葉のふしぎを紐解いたら

本記事はナツさん(@unfinisheddaisy)企画の「Catcher In The Relay」にもとづき、UNISON SQUARE GARDENの5枚目のアルバム「Catcher In The Spay(以下、CITS)」のとある曲について、ふと感じた「ふしぎ」をわたしなりに紐解いたものです。

 

企画の内容は「Catcher In The Relay 推理編 トレイラー記事」「Catcher In The Relay 解決編 トレイラー」をご参照ください。

 

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道路を歩いたり、車で走ったりしていると、あちこちに標識があるのを見かけます。陽が落ちると見えづらくなる標識もあるけれど、道路一面に描かれていたり、 ビビットな色で描かれていたりしたら、気づかないわけがありません。


たとえば

そして

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それから

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のようなもの。

 

「止まれ」は「止マレ」と送り仮名がカタカナになっていたり、「STOP」と英語が併記されていたりと、さまざまな表示方法があって、バリエーションは豊かです。ふとした日常になじむもの、だけど道ゆくひとの視線を集めるように工夫がなされているのでしょう。

 

とくにあれ?とつい視線を寄せてしまうのが、

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のような道路標示です。

 

「おとせ」をフリック入力なりキーボード入力なりしてみると、「落とせ」と漢字変換されるのに、なぜか送り仮名が省略されています。

 

Weblio辞書で「落とす」を引いてみます。

おと・す【落(と)す】
読み方:おとす

[動サ五(四)]

1 上から下へ勢いよく、また急に移動させる。

2 ある所・手元から離す。

(他略)

Weblio辞書

送り仮名の「と」は(と)と括弧付けされていて、省略してもよさそうに見えます。

 

さらに文化庁によると、

許容

 

読み間違えるおそれのない場合は,活用語尾以外の部分について,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。

〔例〕

浮かぶ〔浮ぶ〕 生まれる〔生れる〕 ・・・

・・・ 起こる〔起る〕 落とす〔落す〕 暮らす〔暮す〕

文化庁 国語施策情報

送り仮名を省くことを許されているものがありました。許容――となんだか強い制限のように感じてしまいますが、よく前書きを読むと、日本語の柔軟性が分かります。

文化庁の「送り仮名の付け方」は、あくまでも現代の国語を書き表す場合のよりどころとされたもの。例外はあって、漢字を記号的に用いたり、固有名詞を書き表す場合を対象とはしていない――つまり道路標識や表示は記号として使われているため、送り仮名が省略されている(省略してよい)のでしょう。

とくに道路表示は、狭い道幅や急なカーブなど、限られた空間のなかで警告を促さなければなりません。できるだけ分かりやすく、より短く――と、送り仮名が省かれるのは自然なように思えます。


UNISON SQUARE GARDENのとある曲――「流れ星を撃ち落せ」にも、送り仮名「と」がありません。

 

「落とせ」ではなく、「落(と)せ」

 

変換しずら〜〜!と突っ込みたくなるのを抑えながら、なぜ送り仮名が省かれているのかといえば、注目と警告、そして命令ではないかと解いていきます。

 

注目

「流れ星を撃ち落せ」は、フルアルバムCITSの7曲目として輝くように登場しました。アルバムの曲名一覧を並べてみると、この曲はとても特徴的です。送り仮名が省かれているために、「あっ!」と注目してしまいます。聞いてみればなお、流星のように鳴らされるシンバルから始まる、渦巻くようなイントロのメロディに全身の注意が向いてしまいます。ジャケ買いならぬタイトル聞きをしたくなるし、一度聞いてしまったら曲に「落る」ことでしょう。

注目はタイトルだけではなく、曲中にも散りばめられています。

ヒカル星 ミライ話 まにまに繰り広げ恭しい

何度も繰り返し歌われる、どうしたって頭に残る特徴的なフレーズです。サビと同じくらい歌われる回数は、重ねられたぶん注目度が上がるものです。きっと重要な言葉かもしれないし・・・ そうでなくても、メロディにこの歌詞が乗ると「くそヤバい!」と感じるのは間違いありません。聴くたび、左右に体を揺らしたくなるメロディです。蛇足ながら意味を想像してみると、ヒカルとミライが韻を踏んでいるから、もしかすると星のようにまばゆい明日を繰り広げたさまを歌っているのかもしれません。「まにまに繰り広げ恭しい」なんてUNISON SQUARE GARDENでしかお目にかかったことない言葉遊びだから、ロックバンドの行く末に注目したくなるのです。

 

警告

道路標識や標示が事故を防ぐための警告であるなら、本曲はshakeのhandが50万への警告でしょう。粗末に扱われるCD、心身を壊してしまう人々、そして画一的な価値観への。

ちょうどアルバムが発売された2014年から数年前、某アイドルグループが爆発的なブレイクをして、オリコンランキングの上位を占領しました。「値打ちがわかんない」「逃げろ」という言葉は、そうしたアイドル商法に警鐘を鳴らしているようです。右習えと言われたら右を向く。そんな同調圧力は必要なのかと問われています。

何が正しいことなのかは、言われるまでもなく、自分たちで考えてこそ正義なのでしょう。 なにかに注意しろと警告されたとき、スマートフォンで調べていては間に合いません。(と書きつつ、本記事はめちゃくちゃインターネット検索に依存しているのですが)

そんなスマートフォンでコミュニケーションが多様化されたのも、ちょうど2014年前後です。データ通信量が定額になり、Twitter(現X)・InstagramFacebookといった、SNSが流行りはじめました。流行らないと歌われているロックに反して。

SNSはとても便利です。手軽に文字や写真を投稿して、おなじ趣味や嗜好のひとと楽しむことができます。文通やPCでしか巡り会えなかったひとと出会えるのは、幸福な時代――かもしれません。文字だけのメッセージが連なる画面上で、ひとり呟いたり誰かと会話をしたりすると、広い世界中にひとりぼっちではないと、一体感や安心感を覚えるものです。投稿したものにいいね!がたくさんつけば、承認欲求が満たされます。たとえ、誰かを傷つけるような言葉であったとしても、大多数の意見としてもてはやされ、拡散されていく。「届け」と呼びかけられなければ、みんなと一緒への警戒を怠って、小さな画面に没頭していたことでしょう。SNSが大好きだからこそ、ロックに恥じない使い方をしていきたいと思うばかりです。

 

命令

表題「撃ち落せ」も、サビの「shooting shooting star」も、強い命令口調になっています。「止まれ」は停止線または交差点の直前で一時停止しなければならないのと同じように、○○しなければならないのです。

よく流れ星に願い事ごとをすると願いがかなうなんておまじないを聞くけれど、それそのものを撃ち落せ、と。奇跡のような他力本願ではなく、自ら幸運を掴み取れと言われているようです。ラッキーセブンといわれる〝7番目〟メジャーリーグで大逆転が起こりやすい〝7回目〟に位置する本曲にそう叫ばれたら、無理難題へ挑戦してみるしかありません。――流れ星を撃ち落せることができる可能性を考えてみましょう。

 

些細な可能性への挑戦

流れ星なんてそうそう見れないだろう――と思いませんか?  じつは日本のベランダで1時間に1個の流れ星が見られる確率は39%とのこと。東京で1年の間に芸能人に遭遇する確率とおなじと分かれば、見ることはできそうだし、もしかしたら撃ち落せるかも・・・? なんて気がしてきます。

ベランダから流れ星を撃ち落としたらそれは隕石になってしまうんじゃないかという疑問はさておき、なんかすごいバズーカ砲みたいなもので、流れ星が地球の大気圏に突入し、空中で燃え尽きる前に撃墜できれば、撃ち落せたことになるはずです。

 

①なんかすごいバズーカ砲を発明できる

→きっと日本のトップ大学生

→0.12%

 

②バズーカ包をつくれる札束がある

→年末ジャンボ宝くじ1等7億円に当選する

→0.00001%

 

③流れ星が燃え尽きない

≒流れ星が隕石になって落下する

→0.00005%

 

①②③に流れ星を見られる確率39%を掛け合わせると、0.00000000234%

0がたくさんなのでまとめると、10億分の2.34%です。途方もなく0%に近い・・・でも、0%ではない数字になりました。0%ではない限りぜったいにできないことはないから、撃ち落せる可能性はあります。むしろ、バズーカ砲をつくれる札束を当てる方が大変そうだとさえ思えてきます。

 

本曲「流れ星を撃ち落せ」の、2:47から始まるアウトロを聴いてみましょう。

 

2:55のギターの音階が「落ちて」います。

 

Bサビとオチサビの間にも、同じ音階がありますが(2:10ごろ)、アウトロは音階が落ちるだけでなく、ギターとベースの音階が上がったあと、曲が締められています。それは曲の終わりだというのもあるだろうけど、何かを暗示していると希望してしまうのです。

 

そうきっと、流れ星は――。

 

⭐︎

 

夜空に流れる星を見つけると、「あっ!流れ星」と指差し見上げてしまうほど、とくべつな存在です。流れ星をうたうロックは日常のそばにありながら、思考することを促してくれます。100歩右や100歩上にどんなものがあったとしても、それは自分で歩むと決めた道です。右折指示の道しるべの先は、自分で状況を判断しなければいけない「その他の注意」の警告かもしれないし、突然「止まれ」と命令されるかもしれない。未来は分からないけれど、今なら分かります。ユーザ辞書に登録した今なら、もう迷うことはありません。流れ星を撃ち落せ!!と。変換しずらくてモヤモヤしていた気持ちは晴れわたりました。

 

⭐︎

 

「好き勝手やる君はマジでヤバい」と鳴らしてくれるUNISON SQUARE GARDENのお三方へ甘え、好きなように「流れ星を撃ち落せ」について書きました。謎にはトリックがありますが、曲の解釈には正解はないはず――と信じて。アルバムを主体とした企画に参加するのは初めてのため、粗相がありましたら申し訳ありません。1つの曲ばかりについて考えることは、いままでの自分だったらできなかったことです。主催のナツさん、そしてツイートにいいね!してくださったフォロワーのみなさんありがとうございました。次回きっとCITSRR(Catcher In The Relay Revival)があると信じて、自己研鑽に努めます。

 

次にリレーするのは▶︎「何かが変わりそう」です。

汽笛の音が聞こえるか?/Mosukyさん

ポップが全てじゃないのでは?/にゃさん

今はもう宝箱 優雅に走る宝箱/ハグルマルマさん

 

まとめ記事は▶「Cather In The Relay」からぜひに!

 

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【参考文献】

文化庁 国語施策情報 送り仮名の付け方

・QuizKnock ラッキーセブン、なぜ“7”が良いの?【素朴なギモン】

YAHOO! JAPANニュース 【保存版】誰かに教えたくなる世界の色んな確率まとめ

・tenki.jp 【動画あり】流れ星が見られる確率は?【ポアソン分布】【オリオン座流星群】